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2010-01-04 20:00

その他

白河桃子の「対談」1~『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』著者・ 横田増生さんとの対談【1】

婚活
日経ビジネスAssocieオンラインに白河桃子さんの対談がかつて連載されていました。これからこの対談から印象に残ったものを取り上げていきます。

先進国の出生率は、生きやすさの指数でもある

山田昌弘中央大学教授との共著の『「婚活」時代』白河桃子さんは『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』を著した、ジャーナリストの横田増生さんに、こう問いかけています。
『そろそろ「これまでの男女システムはダメだ」という意見が出てきてもいい頃だし、「男は仕事、女性は家庭中心」という旧来の意識のままで婚活しても、もうこれ以上結婚する人は増えないと思います。そういう意味で、フランスにはヒントがあるのではないでしょうか。』
と。それに答えて横田増生さんはこう言っています。
『日本とフランスでは社会システムが随分、違いますからね。』『今のフランスを見ると「初めから専業主婦はいなかった」という印象を持ちますが、そうではなかったんです。1970年代までは、専業主婦という生き方がまだ根強かった。その後、社会がだんだん変化していって、今のフランスがあるんですよね。賛否両論ありますが、僕は「結婚の自由度」や「生きやすさ」という面では、日本よりフランスの方が上だと思います。それは、出生率という数字、2008年の日本の合計特殊出生率は1.37、フランスは2.02に表れているしね。』


フランスの人々の考えのその根底には「人間は家庭と仕事、どちらも満たされた時に幸せになる」という考えがある。

白川さんが
『日本の若い女性は、バリバリ働きたくないという“ゆるキャリ”希望の人が多いんです』
というと横田さんは
『確かにフランスは、国際機関が行っているジェンダー調査で見ても、女性の地位は決して高くないんですよね。アメリカに比べると女性管理職の割合は低く、会社のトップは圧倒的に男性が多い。2007年にセゴレーヌ・ロワイヤルが女性初の大統領候補になったので、フランスはバリバリ女性が働いているというイメージがありますが、実はそんなことはないんです。確かに、全体的にゆるキャリですね。
 それでもフランスが、日本と違って経済的に苦しまずに子育てができる社会なのは、その仕組みとして1970年代から「男性1人が働く」のではなく、「男女共に働く社会」を意識してつくったからだと思います。逆に言うと、専業主婦にはほとんどなれない。』
と答えます。

また、横田さんは
『「専業主婦は高嶺の花」という考え方もない。例えば大学で勉強している女性に「あなたがすごくお金持ちの男性と結婚したら、専業主婦になりたいですか?」と聞くと、答えはノーなんです。「私は私の生き方があるんだから、それはおかしい」という回答が帰ってくる。これはあくまで僕が取材で会った人の例ですが、「専業主婦になりたいという発想がほとんどない」という印象を受けました。
 フランスでは8割の女性が働いており、残りの2割には学生や求職中の人などが含まれていることを考えると、日本でいう専業主婦は1割台なんです。だから、専業主婦は決してメインストリームではない。フランス人の話を聞いているとそう感じるし、社会や企業の仕組みから考えてもメインストリームからは外れているという感じかな。』
とも言います。



フランスの歴史は父親殺しの歴史

白河さんがこう言います。
『ご著書の中で最も印象に残ったのが、「フランスの歴史は父親殺しの歴史」というくだりでした。
 フランスは、女性が自由に働き子供を産む権利を保障していくにつれ、父親の居場所、つまり父権みたいなものをどんどん削っていく方向に進んだわけですよね。でもフランスの場合、そうしなければ子供は増えなかった。』
それに対して横田さんはこう言います。
『幸福か不幸か…。フランスの場合、時代の流れでそうなったので選択肢がなかったという面もあるけど、「一家の長が父親であってその下にヒエラルキーがある」という父権に本当に理屈があったのかというと、僕はないと思います。だからこそ、崩れ去ってしまったんです。
 結局、父権とは砂上の楼閣だったのではないでしょうか。それは、今の日本に表れていますよね。「威張っているお父さん」は、人生の後半で寂しくなってしまう…。そういうイメージがあるのは、父権という前提が間違っていたからではないでしょうか。
 確かに、フランスの父親は日本の父親と比べたら、仕事もして子育てもして、いろいろなことをしなくちゃいけないけど、それを幸福か不幸かというのは難しいですね。
 ただ、僕が1つ言えるのは、フランス社会の根底には「仕事と家庭を両立させると幸せになる」という考え方がある、ということです。フランスに住んでそれを強く実感しました。』
と。そこで白河さんは一つの結論としてこう言います。
『それにいち早く賛同したのは、実は日本の女性だったんですよね。日本の女性誌の目標は、ずっとフランスの女性だったんです。仕事をして、個人としても輝いて。でも、今の若い人たちは外国にあまり憧れなくなってきているから、アラフォー世代が一番影響を受けているのかなという印象を持ちます。日本の女性たちは、アメリカ女性のようにバリバリのキャリア志向ではなくて、そこまで頑張りたくないと思っている人が多いから、フランスはやっぱりいいモデルになると思います。』
と。

結論

以上の白川さんと横田さんの対談から日本が迎えている少子高齢化社会において、推察出来ることは、「専業主婦」という生き方は少数派になり、また、バリバリのキャリア志向の生き方もまた少数派となり、それは言うなれば「人生」にとっての「余裕」ある生き方が、今、模索されていると言うことです。家庭一筋、仕事一筋という生き方は、それだけで人生のいらぬ「負荷」となって、人間を追い詰めることになるのかもしれません。
多分、「家庭と仕事の無理のない両立」というありきたりのことを模索することで、新しい思いもかけない人生が待っているのかもしれないという、余りにも「普通」なことが新しい「人生」の、しかも「充実」した生き方なのかもしれません。
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